書籍の内容
押し寄せる老朽化、料金6割上昇、人口減に維持困難……、これらは水道について語られる言説だ。国は、水道法改正を視野に置いて、この危機を乗り越えようとしている。一つは、地方公共団体が水道事業者のまま、運営を民間事業者に設定すること。二つめは、基盤強化のための基本方針を定め、都道府県が関係市町村の同意を得て強化計画を策定し、広域化を図り、スケールメリットを得ること。つまり、民営化と広域化だ。はたして、この方向を導き出した分析は正しいのか。すでに、各地で起こっている「水」めぐる民営化と広域化の動きを検証して、「いのちの水」をどう守っていくか多角的に考える。目次
プロローグ●水をめぐるウソ・ホント
- 1 給水量が減り料金収入激減、投資ができず老朽化が加速!
- 2 水道の普及率と投資額の推移
- 3 管路の老朽化の現状と課題
- 4 水道基幹管路の耐震適合率
- 5 水道広域化が進んでいない
- 6 市町村による水道料金差が大きい
- 7 水道事業体における職員の高齢化と減少はなぜ
- 8 水道現場における経験ある職員が必要なワケ
- 9 民間に委託したことで経費が削減できたのでしょうか?
解説●2018年水道法改正とは
- 1 2018年水道法改正の内容
- 2 水道法一部改正の問題点
- 3 いま地方自治体で必要なこと
Ⅰ 水をめぐる広域化と民営化の現場
イントロダクション●各地で具体化する広域化・民営化の動き
- 1 自己水源放棄・広域化の流れ
- 2 唐突な提案・結論ありきの姿勢
- 3 過去の過剰投資には「ほおかむり」
- 4 コンセッションは「経営基盤強化で経営改善」のはずが……
- 5 水道だけではない、コンセッションの拡大
- 6 水道民営化に対する根強い不安、議会や住民による反発
- 7 今後の闘いの糧として
1 香川県●県主導の水道広域化の矛盾
- 1 香川県の水事情と広域化計画
- 2 自己水源廃止の矛盾
- 3 市町の自治ないがしろの広域化推進
- 4 不参加自治体にはペナルティ
- 5 住民が関与できない水道にさせない
2 宮城県●水道事業へのコンセッション導入の問題点
- 1 宮城県のコンセッション導入構想
- 2 宮城県の水道事業と課題
- 3 「企業の利益を損なう」として業者選定過程が「非開示」に
- 4 みやぎ型管理運営方式の問題点
- 5 県民の理解を深めるために
3 浜松市●下水道処理場のコンセッション化問題
- 1 浜松市の概要
- 2 浜松市下水道事業と静岡県西遠流域下水道
- 3 西遠浄化センター、コンセッション化の経緯
- 4 コンセッション化ここが問題――2017年5月議会での反対討論
- 5 国の目論見への対抗
4 京都府●簡易水道と上水道の統合
- 1 簡易水道事業とは
- 2 簡易水道事業の現状と統合への経緯
- 3 福知山市での統合事例
- 4 簡易水道事業の抱える問題点
5 奈良県●奈良市中山間地域の上下水道のコンセッション計画
- 1 市町村合併後の奈良市の上下水道
- 2 上下水道コンセッション計画の概要
- 3 民営化の背景にあるもの
- 4 住民の声を背景に議会で民営化条例案を否決
6 埼玉県●秩父郡小鹿野町民の水源・浄水場を守る運動
- 1 秩父郡市の河川と水源
- 2 水道事業の統合の経過――住民不在で進められた広域化計画
- 3 広域化準備室の主張するメリットと無理な配水計画
- 4 小鹿野町であがった住民の批判
- 5 水源・浄水場を守る住民の運動
- 6 秩父地域水道事業の統合――秩父広域市町村圏組合の事務に
- 7 明らかになった広域統合の問題
- 8 今後の運動
7 大阪市●市民が止めた水道民営化
- 1 ちょっと待って! 水道の民営化
- 2 大阪市水道民営化の前哨戦!府営水道・市営水道の統合
- 3 「二重行政」の解消の野望がとん挫、民営化計画へ
- 4 広がる共同と民営化ノーの声
8 滋賀県●大津市のガス事業コンセッション
- 1 現在まで大津市ガスがどう運営されてきたか
- 2 今回の民営化の背景――電力・ガス小売の自由化・市全体の行革
- 3 「あり方検討委員会」が答申した民営化(コンセッション)のポイント
- 4 議会や市民の運動で明らかになった問題点
Ⅱ 水をめぐる広域化・民営化の論点
1 上水道インフラの更新における広域性と効率性
- 1 「朽ちる水道インフラ」は本当か
- 2 水道インフラの広域化・民営化をめぐる論点
- 3 水道事業の広域化と効率化
- 4 水道事業の民間活用の目的と実際
- 5 水道インフラの更新計画のために
2 水道の民営化・広域化を考える
- 1 水道とは
- 2 水道事業は地方公営企業
- 3 PFI法・コンセッション(公共施設等運営権)と水道
- 4 水道の民営化・広域化を進めようとする動き
- 5 公共施設等運営権実施契約書の実際
- 6 水道と広域化・民間化の問題点
- 7 世界で進む水ビジネスと再公営化
- 8 いのちの水を守るために